犀の角の日記

ブログ、はじめました。そいつで大きくなりました。

カス

 「人間が嫌いだ」というと、だいたい決まって「でもあなたも人間じゃないですか」と返される。ふむ、なるほど、たしかに僕も人間である。だが、それがどうした? そう言われたからといって「あ、本当だ!俺も人間だ!知らなかった〜いやサンクスサンクス」とはならない。そんなことを言われるまでもなく、僕は自分が人間だと知っている。では、この相手はいったい何を意図してこのように発言したのだろうか。
 おそらく、「あなたは人間が嫌いだという。でもあなたも人間である以上、人間を嫌うのは間違っている」と言いたいのだろう。しかしここには飛躍がある。この飛躍をより分かりやすくするために、相手の主張を整理してみよう。

1. 俺は人間が嫌いである
2. 俺は人間である。
3. ゆえに、1は誤りである(=俺は「人間が嫌いだ」などと言うべきではない)

 相手の主張はこのような形に整えることができる。しかし、ここには抜け落ちている前提がある。それは「人は、自分を嫌うべきではない」という前提である。これがなければ相手の主張は(少なくともこの主張の内部では)整合的だとは言えない。俺自身が人間であることと、俺が人間を嫌うことの間にはなんの関係もない。どちらもただ事実や意見を述べているにすぎない。この2つをつなぐ理由がなければ、相手の主張は妥当なものとはなり得ない。
 第一、俺の「人間が嫌いだ」という意見の「人間」に自分が含まれているのかどうかも、ここでは明らかでない。ここでの「人間」を細かく言えば、「想像力を欠き、思慮も分別もない人型をした単なる獣」といったところだろう。それを長ったらしくいうのが面倒なので、単に「人間」と言っているだけだ(これを俺の落ち度・説明不足というのなら、それはその通りである)。
 さらに、このような「獣」に俺は含まれていない、と少なくとも俺は思っている。たしかに、俺もそのように振る舞うことがありうる。しかしそれは「獣」と対峙するような、限られた場面においてだけである。相手が人間らしい人間であれば、何かしらの不調を抱えていない限り俺はそのような行為は決してしない。なので、「人は自分を嫌うべきではない」と付け加えたところで相手の主張は——その内部では正しくなるが——俺への反論として成功しない。


 ……ということを面と向かって言ったところで、相手からすれば「は?なんやこいつめんどくさ」となるだけであり、相手は話の内容を理解せず、結局は時間の無駄である。そのため、俺は「そうですね〜(アホが。少しは考えて口開け)」と言うだけである。人間ってやっぱゴミだわ。